社保庁の年金記録、全国学力テスト、自動車登録、特許申請――。我々はNTTデータのシステム無しには暮らせないようになっている。だが、今や、その独占手法に逆風が吹き始めた。変身を余儀なくされる「システムの巨人」の内情を明かす。 五千万件の「宙に浮いた年金記録」で杜撰さを責められた厚生労働省と社会保険庁は、NTTデータ(と日立製作所)に頼ることにした。六月五日、年金記録を照合する新しいコンピュータープログラムの開発委託を決めたのである。理由は、金融機関の顧客口座を名寄せ(本人確認)するシステムを開発した実績があるから、というもの。安倍首相の言明どおり一年以内に照合を終えるには、プログラム開発に費やせる時間は少ない。システム業界からは「請け負えるのはNTTデータだけ。日立は何をするのか?」との声が聞こえてくるが、その背景には「名寄せの実績」以外の理由がある。 そもそも社保庁の年金システムを開発したのはNTTデータだった。社保庁で“退役”を待つ現行システムも、データの自社ビルにある巨大汎用機を中心とした旧世代仕様。運用担当はデータの子会社だ。年金システムの受注を独占してきた以上、詳しいのは当たり前のこと。業界は、“蓄積”がなければ短期間の名寄せなどできっこない、とみていたのだ。

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