「おままごと政治」の不運

執筆者:2007年7月号

 自民党ベテラン議員がつぶやいた。好事魔多しというか、ちょっとしたことがきっかけで政権は傾いて行くんだな。あの橋本龍太郎内閣の時もそうだった。ロッキード事件有罪の佐藤孝行を入閣させたころから支持率が急降下、参院選敗北で退陣に追い込まれた。 五月の連休明けぐらいまでは、参院選の結果がどうあろうと、衆議院で三百六議席も持っていたから、安倍政権そのものの屋台骨が揺らぐなどということを予想する向きは少なかった。それが松岡利勝農水相自殺、宙に浮いた年金記録などで政権が急に衰弱して行く。これで参院選で大敗すれば、ひょっとしてひょっとするかもしれない、とそのベテラン議員はなぜか嬉しそうに語る。 それにしてもこれが小泉劇場で総選挙大勝利した同じ政党だろうか、と思うほど自民党安倍政権はおたおたしている。あわてて手を打てば打つほど傷口を広げている。まさに「負のスパイラル」である。政権衰弱の原因は、世論の政治不信などよりも、安倍晋三という政治家の魅力の欠如からくる求心力のなさにある。「松岡農水相」の人事に賛成した人はだれもいなかった。側近中の側近、中川秀直幹事長もいかがなものかと反対の意向を伝えたが、逆に窘められる。閣僚人事にあたっては「身体検査」と呼ばれる司法当局の調査報告が首相のもとへ届けられる。そこでイエローカードが出たであろう人物を首相は「農業改革のためには余人をもって代えがたい」と起用した。「総裁選の直前に寝返って安倍支持に回ったからといって、あんな危ない人物を閣僚にし、自分をはずすのか」と多くの「入閣適齢期」の自民党議員たちは怒った。

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