「ディーラー泣かせの相場」という声もある。証券会社のディーラーは会社から数億円の資金を預かり、毎日、株を売ったり買ったりして儲けるのが仕事。ところが、最近の株価は一日のうち最高値と最安値の差が三百円も開く乱高下が日常化。見通しを間違えると、損失を出してしまう。あるベテラン・ディーラーも「午前中に買いが多く、今日は上がると思うと、午後になって外資系証券の先物売りがドッと出て株価は急落。ニューヨークが上がったのに東京は値下がりし、松岡利勝農水相の自殺で値下がりを予想すると上がる……。難しい相場です」と嘆く。 加えて、新興市場では上場廃止や赤字決算の企業が続出し、株価は下落。個人投資家が離れ、証券会社の決算は軒並み減収減益だった。大手証券は新規上場手数料や投資信託の販売で稼いでいるが、ネット証券に個人客を奪われた中小証券はディーラーが稼ぐ利益に頼っているのが現状。特に歩合制のディーラーは、赤字を出せば待っているのはクビで、証券会社を渡り歩く者も多い。以前、日本グローバル証券がディーリングに依存したら業績が傾き、ライブドアに買収された例もある。リスクが大きいだけにディーラーを増やそうという証券会社は少ない。ところが、岩井証券が「三十五名のディーラーを百名に増員する」という。同社を上場企業に育て、「中興の祖」ともいわれる沖津嘉昭社長(六六)は「自己売買で稼ぐ欧米型証券会社を目指すのか」と注目されている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。