近頃はとんとご無沙汰しているが、暑い日の東京ディズニーランドでほとほと困ったことがある。周知の通り、ジュース一本たりといえども、笑顔抜きでは売らないというのが、かの「夢と魔法の王国」の流儀である。だが、ジュース売り場には長蛇の列が出来ている。ああ、なんでここには自動販売機がないんだろう。喉の渇きを覚えながら、ディズニーの国際標準を恨めしく感じたものである。 そこで気付いたのだが、日本以外では自販機はさほど信用されていないのだ。まず治安の悪い国では使えない。機械が信用されない国でもダメ。モノを定価で買う習慣がない、あるいは消費者が実物を手に取ってみないと納得しないという国でも普及しない。日本はかなりのレアケースなのだ。 日本における自販機の台数は全国で五百五十万台。それらを通して売られる飲み物、煙草、切符などの総販売額は年間七兆円に達する。これはコンビニの総売上に匹敵し、デパートに肉薄する金額であるから、流通業に占める地位は相当なものだ。 とはいえ、その存在はあまり意識されることがない。例えば自販機のメーカーで最大手はどこか、と尋ねたところで、知っている人はきわめて限られていることだろう。

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