“待たされた男”ブラウン英首相の前途

執筆者:マイケル・ビンヨン2007年7月号

相手は人気の高いキャメロン保守党党首。十年余も待ってへたをすれば短命政権に終わるかもしれない男の心中は――。[ロンドン発]彼は、その“椅子”が空くのを十年以上も待ちつづけた。その間、堅実な財政運営で英国をかつてない繁栄へと導き、アフリカの貧困救済と途上国の債務軽減へ向けて陣頭指揮をとったことで国際社会から高い評価を得ながら。 そして遂に、時来たれり。彼、ゴードン・ブラウン(五六)は六月末、トニー・ブレアの後継として英国首相に就任する。労働党が野党だった一九九四年、ブラウンは自ら身を引いてブレアに党首の座を譲った。あれがなければ、もっと早くに首相官邸「ダウニング街十番地」の住人になっていたのかもしれないが、十年余りの時を経て、英国はこの謎多き男にその舵取りを委ねることになる。そう、ブラウンは、有権者ばかりか、友人や労働党にとっても、いまだ“顔のよく見えない人物”なのだ。内政を知り尽くす ブラウンの経歴は、まさに次期首相にふさわしい輝かしいものだ。財務相(イギリスではChancellor of the Exchequerと称される)に就任して十年余り。その在任期間は過去二百年で最も長い。就任一週間で早くも手腕を発揮、英中央銀行の独立性を確保し、めざましい成果を上げる。インフレには歯止めがかかり、経済の堅調を反映して失業率は低位安定、労働党は「無責任な財政運営」「増税依存」の汚名を返上した。

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