五月二十八日から米アラスカ州アンカレジで開かれた国際捕鯨委員会(IWC)の年次総会は、商業捕鯨一時禁止(モラトリアム)の継続を採択した。賛成三十七、反対四、棄権四(加盟国は七十七、決議に強制力はない)。日本など捕鯨支持国は投票に参加しなかった。 この結果は、ある程度予想されていた。昨年の総会において商業捕鯨の再開容認派が一票差ながら初めて過半数を制したことで、反捕鯨国が強烈な巻き返しに出ていたからだ。 今回の開催地と議長国が米国(反捕鯨国)であることから、副議長国を務める日本の代表団には「あまり米国を追い詰めることはできない」(水産庁幹部)という思いが強かった。米民主党と比べ、共和党のブッシュ政権はグリーンピースなど強硬に反捕鯨を主張する環境保護団体と距離を置く。外務省筋は「(四月末の日米首脳会談では)アンカレジの会合はコームリー(静か)に終わらせようという合意があった」と明かす。 いざ総会が始まると、正副の議長国が建設的な発言を求めるも、「冷静とは程遠い発言が続いた」(参加者)。日本代表団は罵声に耐え、早々と先住民の伝統的な捕鯨(生存捕鯨)の継続容認というカードを切って「コームリーな会合」を目指した。四月末の安倍首相の訪米直前には、地元の生存捕鯨への理解を求めるアラスカ州選出の上院議員がホワイトハウスに書簡を届けており、日本側は、網走(北海道)、鮎川(宮城)、和田(千葉)、太地(和歌山)などで細々と続けられている小型船での沿岸捕鯨にも一定の理解を得られると読んでいた。

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