この五月に就任したニコラ・サルコジ仏大統領は、国内の最初の訪問先に南仏トゥールーズにある欧州航空大手エアバスを選んだ。超大型機A380の生産遅れ問題が深刻化、約一万人の人員削減を含むリストラ計画を決めたものの、現場の不満は強くストも起きているためだ。 しかし、大統領はリストラ計画の撤回は求めず、エアバスを子会社に持つ欧州最大の航空・防衛企業EADSの根本的な改革を口にした。株主構成を見直し、大株主としての仏政府の権限も強めたいというのだ。 EADSはエアバスのほか軍用機、ヘリコプター、人工衛星などの部門を持つ、年間売上高約四百億ユーロ(約六兆五千億円)、社員十一万六千人の欧州屈指の巨大企業だ。しかし仏、独、スペインの企業の統合で誕生した経緯から、組織構造は複雑だ。特に中核をなす仏独の力の均衡維持は発足以来の絶対条件だった。仏独ひとりずつ二人の共同会長、二人のCEO(最高経営責任者)を置き、その下にエアバス社長らがいる。A380の生産遅れも社内の風通しが悪かったことが事態を一層悪化させた。 しかし、最近、仏の大株主ラガルデールはメディア事業に集中するためEADSの株式を手放し始めた。独側大株主のダイムラークライスラーも持ち株比率を引き下げた。両社は明らかにEADSの経営に関心を失いつつある。「責任ある別の大株主が必要だ」「政府も株主として役目を果たしたい」――サルコジ氏はこんな思いを強めていた。

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