“選挙対策”にすぎないとの批判もある。だが、道州制への議論も進むなか、硬直化した税制に一石を投じた意義は小さくない。 住民税の一定割合を出身自治体などに支払う「ふるさと納税」制度の導入論議がかまびすしい。支持率低迷に苦しむ安倍内閣の「改革の目玉」として急浮上。参議院選挙の争点の一つにもなってきた。税制の専門家はそろって慎重姿勢を示し、構想実現が税収減に直結する東京都など地方自治体からも、一斉に反対の声が上がる。だが、道州制の導入など、地方分権が大きなテーマになってきた今日、柔軟な税制への転換は待ったなしだ。「菅義偉総務大臣の政治手腕はなかなかのものだ」。首相官邸で政策立案に携わるスタッフたちは舌を巻いた。 五月のゴールデンウィーク最中に、外遊先のパリで「ふるさと納税」の構想をぶち上げ、同行した番記者に記事を送らせる。帰国後の会見では「地方が教育費を負担して育てても、いざ税金を払うようになると都会に出てしまう」と誰にでも分かりやすい例を引いて熱弁をふるった。 さらに「実は前々から安倍総理に構想立案を指示されていた」という“出来すぎた”エピソードも披露し、格差批判で追い込まれていた安倍晋三首相に助け舟を出した。当初、菅大臣の思いつきに過ぎないと思われた「ふるさと納税」制度は、あれよあれよという間に安倍内閣の改革の目玉になり、七月の参院選の公約に検討課題として取り上げられた。

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