ウォルト・ディズニー映画のシリーズ三作目「パイレーツ・オブ・カリビアン――ワールド・エンド」が、世界中で封切られた。アジア・プレミアイベントに参加するため来日したジョニー・デップ、オーランド・ブルームなどは、ファンにはすでにお馴染みの顔だ。こうした常連スターと並んで、今回の三作目で大きな役どころを与えられているのが、チョウ・ユンファという香港出身の男優である。シンガポールを拠点とする南シナ海の海賊王「キャプテン・サオ・フェン」として登場する。世界を席捲する中国と中国人がついにディズニー映画の脚本にも大きな影響を与えるようになったのを、「時代の潮流」と認める人も多いことだろう。 シンガポールの日刊紙『ストレーツ・タイムズ』によれば、このアジアの海賊王が登場したことに諸手を挙げて喜んでいるのが、都市国家シンガポールだという。淡路島サイズの島国に約四百三十万人が暮らすシンガポールは、高い経済成長率を維持するために、次々と新しい国家戦略を打ち出していかなければならない。リー・シェンロン首相の年間所得は二億円を超え、英邁な政治家と公務員の給与水準は世界でもトップクラスだ。素晴らしい国家戦略を描くのは政府と官僚機構であり、そのためには高賃金体系を採用して優秀な人材を集める必要がある、とのロジックが見え隠れする。

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