今秋に開催される第十七回中国共産党大会を機に、北京・天津・上海の三直轄市のトップ(党委員会書記)らが政治局入りする慣行に「メスが入る可能性が出てきた」と中国筋が明かす。昨秋に失脚した元政治局員の陳良宇・上海市党委前書記に限らず、地方トップは地元利益を最優先する独立諸侯と化しつつある。強大な権力をもつ政治局員が暴走すれば止めるのは難しいことを「胡錦濤総書記が思い知ったからだ」という。 現在二十三名からなる政治局には、北京の劉淇、天津の張立昌、広東省の張徳江、新疆ウイグル自治区の王楽泉、湖北省の兪正声と五人の地方トップが名を連ねる。うち張立昌はすでに一線を退き、後任には他省の書記(格下の中央委員)が回った。一方、王楽泉は「ウイグル族の独立運動」、劉淇は「来夏の北京五輪」と、それぞれ「特殊任務を抱えているため、特別に配慮する」が、早晩身を引かせる考えだという。たとえば劉は、五輪後、遅くとも一年以内に引退する方向だ。 注目すべきは兪正声(六二)だ。兪の父親は、江青・故毛沢東夫人の元内縁の夫にして初代天津市長の兪啓威。兪正声はトウ小平、江沢民の時代を通じ太子党(有力幹部の子弟)のエースの一人として陽の当たる道を歩み続けたが、「すでに辞表を提出した」という。残る張徳江を「たとえば王楽泉の後任として新疆に回せば、胡政権が強調する沿海部と内陸部の人事交流の目玉にもなる」との意見が胡周辺で強まっており、地方代表を政治局から退かせるのにもはや大きな障害は見当たらない。将来の連邦制を見据え、大行政区制度を模索する胡の布石であることはいうまでもない。

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