孤独な巨人「野村証券」の難問“伴侶探し”

執筆者:鷲尾香一2007年8月号

気がつけば、自分より図体のデカい総合金融グループがいくつも生まれる可能性が。あわてて伴侶を探そうにも、選択肢はごく限られて――。 三年の長期にわたり金融庁長官を務め、七月十一日に顧問へと退いた五味廣文氏には、長官在任中に果たせなかった構想があった。証券業界の再編。五味氏は「銀行と証券会社の統合を進め、欧米の金融機関に対する競争力を強化すべきだと考えていた」(金融庁幹部)という。 これまで日本の金融行政は、顧客に対する優越的な地位の乱用やグループ内での利益相反を防ぐため、銀行と証券の兼業規制を厳格に適用してきた。しかし、欧米では金融コングロマリット(銀行や証券、保険など業態が異なる金融機関で作る複合企業体)がグループ内で顧客を囲い込むスタイルが定着している。特に投資銀行業務も手がける証券分野は重要な収益源だ。 五味氏の念頭にあった主な組み合わせは「日興コーディアルグループ=みずほフィナンシャルグループ」と「大和証券グループ=三井住友フィナンシャルグループ」、そして、「野村ホールディングス=三菱UFJフィナンシャル・グループ」の三つだったようだ。昨年末、不正経理問題が発覚し日興の経営が急速に悪化した時、五味氏は「日興が提携関係にあるみずほの傘下に入り、再編の起爆剤となることを望んでいた」(別の金融庁幹部)という。

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