日本の北の端、宗谷岬からオホーツク海沿いを車で南下すること約四十分。携帯電話の電波も途切れがちな辺境に「ホタテの村」がある。 三千人に満たない人口ながら、ホタテの水揚げ量で日本一を誇る北海道猿払村。その村を支えているのが、中国からやって来た約百人の若い女性たちだ。 海産物の生臭さと潮の匂いが立ち込める作業場に、手の平大のホタテの貝殻がぶつかり合う音が大きく響く。そんなホタテの加工場で、中国・山東省出身の劉暁玲さん(二三)は働いている。「猿払村に着いたときは、ちょっと田舎でびっくりしました。でも、今は大好きです」 化粧っ気のない顔で笑う彼女は、日本に来て三年目。独学で日本語検定二級を取得し、流暢な日本語を話す。 劉さんは、外国人研修・技能実習制度(以下、研修制度)を使って来日した。一年目は研修生、二年目以降は実習生という資格で働く。日本に滞在できる期間は三年。劉さんも今冬には帰国する。それまでに日本語検定一級を取り、中国で日本語教師になるのが夢だという。 一九九三年に制度ができて以降、外国人研修・実習生(以下、研修生)は増え続けている。現在、この資格で日本に滞在する外国人は約十六万人。留学生の約十三万人を凌ぐ。制度上は「労働者」ではないが、ほとんどが製造業や農業、水産業で肉体労働に従事し、国籍別では中国が七割以上を占めるのが特徴だ。

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