イギリス二大政党の新たな闘いが始まった

執筆者:稲田信司2007年8月号

[ロンドン発]英国は六月二十七日、十年間にわたるブレア時代に終止符を打った。ゴードン・ブラウン新首相(五六)が率いる新内閣の平均年齢は四十九歳で、ブレア政権より五歳若返った。英国史上初めて女性を内相に起用し、新味を出した。大胆な刷新人事に踏み切ったのは、与党労働党がすでに次期総選挙に照準を合わせ、準備に入った表れと受け止められている。 労働党が臨戦態勢をとるのにはわけがある。政権奪還を狙う最大野党・保守党のデービッド・キャメロン党首(四〇)がブラウン政権を「古臭い政治」と切り捨て、攻勢を強めているからだ。「保守党こそブレア政権の真の後継政党」と訴え、総選挙を左右する中道支持層の取り込みに動いている。 ブラウン政権発足の直前、キャメロン氏はブレア政権の教育改革の目玉だった公設民営校「アカデミー」増設を支持する一方、富裕層が多い公立エリート校「グラマースクール」の新設に反対する方針に転換。影の内閣から造反者も出たが、キャメロン氏は中道政党への脱皮を急ぐ姿勢を崩していない。 キャメロン氏は六月初め、党の新しい広報担当責任者として、日曜大衆紙「ニュース・オブ・ザ・ワールド」のアンディ・クールソン元編集長(三九)を招き入れた。同紙記者の盗聴事件の責任を取って、今年一月に編集長職は辞任していたものの、数々の特報を放った敏腕を買った。

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