六月下旬、台湾の最大野党・国民党の党大会で、蕭萬長・元行政院長が来年三月の総統選挙の副総統候補に選ばれた。総統候補の馬英九氏は地元の食品最大手、統一企業の林蒼生総裁を軸に経済界から人選していたが、軒並み断られたようだ。 蕭氏は二〇〇〇年までの国民党政権下で、経済部長(経済相)、経済建設委員会主任委員(経済企画庁長官)を歴任した経済政策通。外省人(中国大陸出身者)の馬氏が、十一歳も年上の大先輩に白羽の矢を立てた理由は、蕭氏が与党・民進党の支持層である本省人(台湾出身者)の有力者だから、だけではない。 蕭氏は五月中旬、台北市内で開かれた「三三会」という地元経営者の親睦会で講演した。三三会は日本企業との交流を目的に設立され、会員企業の売上高の合計が台湾の域内総生産(GDP)の五割にも達する。統一企業の林総裁ら重鎮が勢ぞろいし、日本の「駐台湾大使」にあたる交流協会台北事務所の池田維代表も顔を出していた。 蕭氏はこの席で「全台湾を自由貿易区とする」構想を披露した。主要国と外交関係のない台湾は現在、日米はもちろん、政治対立を抱える中国とも自由貿易協定(FTA)の締結にめどが立たない。蕭氏系のシンクタンクは、東南アジア諸国連合(ASEAN)プラス日中韓の枠組みで貿易が自由化されれば、排除された台湾のGDP成長率は一%近く下がると試算する。

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