――二十年の時を無駄にした無為の航空行政―― 六月末、ブリュッセルから伝えられたニュースが航空関係者の間でちょっとした話題となった。 欧州の低コスト航空(LCC)最大手、アイルランドのライアンエアーが提案していた旧アイルランド国営航空エアリンガスの買収が、欧州連合(EU)の欧州委員会によって「消費者利益を損なう」として認められなかったというニュースだ。ライアンは欧州司法裁判所に提訴するというが、もし実現すればLCCによる初めてのナショナルフラッグ買収事例になるところだった。 同じ頃、東京・霞が関では国土交通省航空局の人事が取りざたされていた。日本航空(JAL)の経営危機に備え、密かに設置された対策チームの主要メンバーと言われた四人の幹部が、今夏の人事異動で一斉に交代することになったからだ。「全員、二年の任期あけ。それにそんな組織はもともと存在しない」と同省は言うが、憶測は関係者の間を駆けめぐっている。 同じ旧国営航空を巡る話題とはいえ、一方はM&A(合併・買収)劇。片や密室の調整。落差は激しい。世界の航空の流れはもはや日本の手の届かぬところに行ってしまった。なぜこんなことになったのか――。

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