東南アジア各地に、「北朝鮮直営レストラン」が相次いでオープンしている。カンボジア四軒(プノンペン一軒、シェムレアップ三軒=未確認の一軒を含む)、ラオス一軒、インドネシア一軒、タイ二軒、ベトナム一軒の計九軒。いずれも北朝鮮の公館が設置されている国だ。そのうちのひとつ、東南アジア地域で最大級の「平壌館」が、昨年、タイのバンコク近郊にオープンしたと聞いて、百聞は一見に如かず、早速訪ねてみた。
「平壌館」は約二百人を収容できる総二階のレストランで、大型バスも入れる大きな駐車場も備えている。夕食時になると一階のステージでは北朝鮮から派遣された「喜び組」風の女性バンド五―六名が三十分間、さも楽しげに歌を披露する。

 閑話休題。本来「喜び組」という言葉は、金正日総書記に仕える女性グループを指したものであり、その経験がなければ「喜び組」と表現するのは正しくないのではと訝る読者も多いことだろう。しかし最近では、北朝鮮出身の若い女性グループがレストランなどに勤務している場合、通称として「喜び組」と呼ぶようになってきたということを断わっておきたい。

 本誌の今年一月号で取り上げたジャカルタの北朝鮮レストランと比較してみよう。バンコクでは女性スタッフは金日成バッジをはずしており、客を誘導して食事の注文は受けるものの、食事やドリンクは運ばず、また食器の後片付けもしない。手を汚す仕事は現地のタイ人に任せ、北朝鮮人スタッフは微笑を振りまいて高額なオーダーを客から取ることに専念している。総合的にみると、ジャカルタの方が値段、サービス、味の点で勝っているといったところか。

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