NTTデータはそれでも“領土拡大”に走るのか

執筆者:大神田貴文2007年9月号

天下りを受け入れ一括受注――そんな手法は通用しなくなる。それでも公共分野に手を出すのなら、責任も伴うことを肝に銘ずべきだ。 この二カ月というもの、NTTデータは「消えた年金」の尻ぬぐいに追われていた。五千万件にのぼる年金記録の照合(名寄せ)プログラム。その開発を利益なしの実費で引き受けた同社は、早々に年金システム対策本部を設置した。担当の公共部門だけでは人手が足りず、応援部隊も交えて開発作業を進めているものの、「所詮はトラブルの後始末。社内でも後年“なかったこと”にされかねず、志願者は少ない」(関係者)という。 利潤を得られぬ大仕事となれば株主の不興を買いかねない。それをあえて引き受けた同社は「国民的な関心事なので利益は追求しない」と歯切れが悪いが、そもそも、いくら発注側の社会保険庁でいい加減な仕事がまかり通ってきたとはいえ、名寄せにとって肝心な人名の確定すら不十分なシステムを提供し続けてきたこと自体、NTTデータには今回の問題の根幹に関わる重い“責任”がある。「利益なし」の文句に騙されてはならない。 ここ三十年近く、社保庁の年金プログラムはNTTデータ製。社保庁が年金の記録管理と給付システムに費やした一兆四千億円のうち、NTTデータグループに払った金額は実に一兆円強を占める。しかも、価格競争のない随意契約で、会計法で定められた契約書さえ交わしていないばかりか、社保庁にはプログラムの著作権もないためシステム更新もNTTデータに頼らざるを得ない。

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