ホワイトハウスのデザート担当シェフで、三年前に引退したローランド・メスニエール氏(六三)が本を出した。題して『大統領のお菓子のすべて――二十五年間のホワイトハウス』。外国の賓客が喝采した創意工夫を凝らしたデザート、お菓子が取り持った米大統領夫妻、家族との交流など、デザートがホワイトハウスの中で占める大きな役割を明らかにしている。 米社交界で同氏を知らぬ人はいなかった。国賓歓迎宴や記念の饗宴の度に「今度はどんなデザートか」が話題になった。 例えばイラク戦争が終結した二〇〇三年のブッシュ大統領の誕生日(七月六日)。同氏はチョコレートで作った空母に、これもチョコレートの戦闘機が着艦する模様をデコレーションケーキにした。マジパン(挽いたアーモンドと砂糖、卵を練り合わせたもの)で作った二匹のイヌとネコも艦上で待ち受ける。「誕生日おめでとう、トップガン」と書かれた砂糖菓子の旗。 大統領が同年五月一日、映画「トップガン」を連想させるパイロット姿で空母に着艦し、イラクでの大規模戦闘の終結を宣言した演出を模したのだ。イヌとネコは大統領のペット。チョコレートケーキが運ばれると、大統領は大感激で、広間は招待客の喝采に包まれた。

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