早くも非難を呼ぶロシアの「水支配」戦略

執筆者:シルヴィオ・ピエールサンティ2007年9月号

世界一淡水資源に恵まれているからと、石油の次は「水」で世界支配を目論むとは、いくら傲慢ロシアでも……。[ローマ発]十九世紀、最も貴重な資源は石炭だった。二十世紀は石油。そして二十一世紀、人々が血眼になって求めるのは水かもしれない。 石油同様、淡水にも「持てる者」と「持たざる者」が存在する。地球上に住む者の四分の一が、あまり、あるいは全くきれいな飲み水にありつくことができない一方で、北半球のわずか十カ国が地球上の淡水の六〇%を独占している。こうした偏りがあるかぎり、石油を巡る争いが今なお絶えないように、将来、「青い金」と呼ばれる淡水を巡って戦争が起きるかもしれない。 しかし、水を石油のように商品化するのは、果たして道義的に許されることなのだろうか。国連の調査によると、貧しく乾燥した地域では、飲用水や農業用水が足りないために二十秒に一人の割合で子供が命を落としている。生物学的にいえば、石油がなくとも人は生きていけるが、水なしでは生きられない。 それでも、水の大々的な商品化を目論む国がある。世界一淡水資源に恵まれた国、ロシアである。 ロシアの広大な大地には二百五十万本もの河川が縦横に走り、三百万以上の湖沼があるため、地下水や氷河を除外しても、十万立方キロに相当する淡水を蓄えている。加えて、日本の国土の少なくとも五倍に相当する湿地がある。千七百七万五千二百平方キロと群を抜いて世界一広い国土を持ちながら、ロシアの人口は一億四千万人。年間の飲用水供給能力が四千三百立方キロもあるのに対し、ロシア人が一年間に飲む水の量は九十八立方キロでしかない。

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