経済関係をテコに着々とミャンマーを“支配下”に収めつつある中国。日本の“知恵”のある付き合い方とは――。 国際社会の中で孤立するミャンマーの軍事政権に対し、中国が救いの手を伸ばしている。現在、ミャンマーにとって中国はタイに次ぐ第二の貿易相手国であり、ミャンマー経済を支える機械類、電気製品、金属類などの多くは中国から内陸部の国境線を跨いで輸入される。その舞台となっているのは国境の町ムセである。 日中戦争期、蒋介石政権は日本軍の攻勢により重慶に避難し、再起を期した。蒋介石を支援する米国は、ベンガル湾沿いのラングーン(現ヤンゴン)から内陸部の中心都市マンダレーを通り、ムセを拠点として中国側の雲南省昆明から重慶へと毎月四千トンもの武器弾薬、火薬、工作機械などの支援物資を送った。かつて「援蒋ルート」と呼ばれたこの街道を逆にたどる形で、現在、中国が交易ルートを開設している。 米国による経済制裁が科され、ミャンマーの貿易が停滞する中、中国との貿易総額は七億ドルを超え、このうち国境貿易は約五億ドルで、ミャンマーの輸出入総額の一〇%以上を占めるようになっている。ムセは国境貿易地域に指定され、中国との貿易の促進が図られている。経済制裁によりドル建ての決済が難しいミャンマーにとって、ドルが不要な中国との貿易は救世主である。中国のミャンマーへの経済進出は、ムセからマンダレーにかけての街道沿いを既に席捲している。

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