本土へ「里帰り」ばかりで焦り気味の香港証取

執筆者:八ツ井琢磨2007年9月号

 香港市場の新規株式公開(IPO)が伸び悩んでいる。昨年は資金調達額でニューヨークをしのぎ、ロンドンに次ぐ世界第二位となったが、今年上半期では百二十五億米ドルと前年同期比八%減少。ロンドン、ニューヨークはおろか、上海にも水をあけられた。今年通年の調達額は上海の半分程度にとどまる見通しだという。 低迷の主因は「H株」として上場する中国本土企業が減っていることだ。昨年は、世界最大のIPOを成功させた中国工商銀行をはじめ計十七社がH株上場。その中には大型国有企業が多く、資金調達額は香港市場全体の九割近くに達した。だが、今年前半にH株で新規上場した企業は三社にすぎない。 本土企業が香港上場する方法には、登記地を本土に残したまま上場するH株のほか、本土外企業として上場する「レッドチップ」があるが、いずれも本土当局の認可が必要。H株上場が急減しているのは「当局が認可しないため」(日系証券会社)というのが、市場関係者の一致した見方だ。 本土当局は二〇〇五年半ば、市場で取引されない「非流通株」の解消を本格化。単純に市場に放出すると国内の株価が一気に下落するため、本土でのIPOを停止し、香港市場を利用せざるを得ない状況にあった。しかし、改革が一段落した昨年半ばにIPOを再開。本土市場育成のため、上場案件の香港流出を制限しているのが現状だ。

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