サラ金との“強制縁組み”に怯える信金・信組

執筆者:鷲尾香一2007年10月号

「二〇〇九年からの規制強化を前に経営危機を迎えているサラ金を、信用金庫や信用組合といった地域密着型の金融機関と経営統合させようとしているのではないか」。金融庁が相次いで打ち出す施策が、金融界に静かな波紋を広げている。 その嚆矢は、金融庁が五月末に発表し、現在も検討を進めている「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の改正案だ。案の中には「会員・組合員に対する相談機能を活かした、予防策を中心とした、多重債務者問題解決への一定の役割発揮」というくだりがある。「会員・組合員」という言葉からわかるように、政府は、多重債務者のさらなる発生を防いだり、多重債務者の生活を立て直すために、協同組合(信金・信組・生協・労働金庫など)を使うことを念頭に置いている。 サラ金を利用する客のすべてが借りた資金を遊興費に使っているわけではない。日本の企業の九割を占める中小・零細企業や個人商店の中には、銀行に相手にされず、やむなく高利で事業資金を借りているケースも多い。だが、グレーゾーン金利の完全撤廃(〇九年末に施行)に先立つ過払い金返還請求にあえぐサラ金業界は、廃業や貸し渋りに転じている。「行き場を失った顧客がヤミ金のような違法業者に走るのを防ぐ」(政府関係者)ため、サラ金と客層が重なる協同組合に白羽の矢が立ったのだ。

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