横綱・朝青龍関が八月末、精神的ストレスによる「解離性障害」の治療のためモンゴルに帰国したことで、日・モンゴルの外交関係者はひとまず胸をなで下ろしたのではないだろうか。 横綱が腰骨の疲労骨折で夏巡業を休場しながら、帰国中にサッカーをしていたことが明るみに出て以降、事態はスポーツの枠を超えて広がった。日本相撲協会が下した二場所出場停止と謹慎処分に、モンゴル各紙では「処分が重すぎる」と同情論が大勢を占め、首都ウランバートルの日本大使館前では市民団体が「朝青龍は軟禁されている」「人権侵害を許すな」と抗議行動を行なった。親日感情が強いこの国では異例のことだった。 外交関係者の懸念は、皇太子がモンゴルを訪問し、友好ムードが最高に盛り上がった直後に問題が起きたことである。このままではモンゴルの世論がねじれ、皇太子の訪問が台無しになりかねない。日本での治療にこだわる相撲協会に、日本の外務省高官は「両国関係への配慮があってしかるべきだ。外国人力士が増えて相撲が国際化しているのに、相撲協会の対応は旧態依然」と不満を漏らした。 日・モンゴル関係は極めて良好だ。一九九一年以降、日本は同国に対する最大の援助供与国で、「日本に親しみを感じる」という人は全体の七割以上。往来も頻繁で、昨年は小泉純一郎首相をはじめ首相経験者三人を含む国会議員約八十人が訪問。同国からはエンフボルド首相が就任後初の外遊先として日本を選び、今年二月にはエンフバヤル大統領が来日した。

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