空前のブームに沸いていたインドの自動車業界に一転、“凪”が訪れている。国内勢最大手のタタ・モーターズの場合、今年度第1四半期の販売台数は前年同期比でわずかに一%増。外資二位の現代モーター・インディア(韓国)は七月の国内販売が前年同月比七・四%減と、大幅なマイナスを記録した。 いずれも大きな原因としているのは自動車ローン金利の上昇だ。背景には、インド経済にインフレ傾向が強まり、政府や中央銀行が金融引き締めを実施したことがある。インドでは新車購入者の九割がローンを利用する。月々の支払い額の増える金利上昇が自動車需要にブレーキをかけたというわけだ。 もっとも、日本のスズキの子会社でインド最大の自動車メーカーであるマルチ・ウドヨグは、新たに投入した小型車などが好調だし、仏ルノーと地場のマヒンドラ&マヒンドラが合弁で発売した低価格セダンは人気だ。また、メルセデス・ベンツやBMWといった輸入高級車も勢いを失っていない。「新しい小型車と超高級車が売れる」という現状は、伸び悩む成熟市場となった日本に通じる。 こうした市場の動向により、インドの自動車市場の急拡大を前提としてきたメーカー各社の中には事業計画を変更するところも出てきた。現代インディアはインド発の輸出に注力しているし、インドでは小型車も超高級車も販売していないトヨタ自動車や本田技研は、まず小型車の投入を急ぐと見られる。

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