政権が業を煮やした「改革しないNHK」

執筆者:本田真澄2007年10月号

NHKは高をくくってきた。金銭スキャンダルの続発にも、根本的な改革を行なわなかった。そこでついに会長人事に乗り出したのは……。「経営者としての能力はおろか、そもそもやる気があるのか。橋本(元一)会長の下ではNHK改革は進まない。安倍首相と菅(義偉前総務相)さんは、遅くとも年内には後任会長を決めるはずだ」 NHK改革の必要性は指摘されても具体像が一向に見えてこない中、ある総務省幹部は水面下で進むシナリオを口にした。来年一月に三年の任期を終える橋本会長を交代させ、後任に大物財界人を据えて経営改革を一気に進める――。実際、関係者の間では、三木繁光・三菱東京UFJ銀行会長、奥田碩・日本経団連前会長(トヨタ自動車相談役)、葛西敬之・JR東海会長、西室泰三・東京証券取引所会長(東芝相談役)らの名が取り沙汰されている。 会長の人選は、十二人の外部有識者で構成される経営委員会が行なうのが建前。だが、その委員の人選には政府・与党の承認が必要となる。つまり、時の政権はNHKの会長人事に強い影響力をもっているのだ。歴代会長をみても、外部からの人材登用が多く、内部昇格は十三代中六人にすぎない。その生え抜き組にしても、故島桂次氏(第十代)は自民党の宏池会に近く、海老沢勝二氏(第十二代)は同じく経世会に近かった。しかも、現在の経営委員長(古森重隆・富士フイルムホールディングス社長)は、安倍首相とその後見人を自負する牛尾治朗ウシオ電機会長が、経団連の挙げた別の候補をわざわざ断り起用している。

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