みずほを悩ませる「一兆円増資」の後始末

執筆者:王武史2007年10月号

 一難去ってまた一難。一時は三兆円近くあった公的資金という国民からの借金を昨年七月に完済し、経営上の大きな重石が取れたみずほフィナンシャルグループが、今度はV字回復の原動力となった増資の“後始末”に難儀している。 みずほが大手生保から中小企業まで約三千五百の取引先に優先株を引き受けてもらい、約一兆円の増資をしたのは二〇〇三年。前年に就任した竹中平蔵金融相の号令一下、大手銀行は軒並み不良債権処理の厳格化を求められていた。不良債権額を厳しく見積もったみずほは国内企業としては史上最大となる二兆円の赤字決算を計上すると同時に一兆円増資に踏み切り、そこで得た資金で不良債権の抜本的処理を進め復活を成し遂げた。このとき発行した優先株式の普通株への転換開始が来年七月に迫っているのだ。 普通株の時価はこの四年間で十倍以上にまで跳ね上がった。しかし、優先株にその含み益は期待できない。そもそも優先株と普通株の交換で大きな損得は生じない。みずほの優先株は一株百万円。仮に転換時の(普通株の)株価が五十万円になっていれば、優先株一株に対して普通株を二株もらえる。株価によってはきれいに割り切れないが、その場合は現金で調整する。一兆円増資の優先株は一株の額面百万円に対し、配当が年二万円(年率二%)。国有化の危機すらあった企業の優先株配当としては著しく低い。

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