北京「汚染ピック」の憂鬱

執筆者:名越健郎2007年10月号

 段ボールの混ざった肉まんはテレビ局のやらせだったが、ブタの廃棄物でつくった肉まん、髪の毛を混ぜた偽しょうゆ、下水から抽出した油で揚げたパンなど「食の中国脅威論」が広がっている。米政府は中国製ペットフードや練り歯磨き、玩具が有毒原料を含んでいるとして使用しないよう消費者に警告。米国の有力大統領候補は競って対中禁輸論を唱えている。 一気に噴出した「食の安全」の問題は根深い。拝金主義に伴う製造業のモラル低下、業者とつるんだ幹部の腐敗、劣悪な衛生意識……。根源には、社会主義市場経済という壮大な矛盾がある。 胡錦濤政権は10月の共産党大会で社会の規律強化を図る意向だが、時代遅れの一党独裁では到底解決につながらないだろう。 中国の農民が種を買って野菜を植えたが、芽が出なかった。気落ちした農民は毒物を買って飲んだが、死ねなかった。 農民がやけ酒を飲むと、酒があたって死亡した。 中国のしょうゆ工場で工場長が労働者採用の面接に当たった。「1キロは何グラムか?」「850グラムです」「すばらしい。明日から働いてくれ」 あの世のマルクスが北京にやってきて、胡錦濤中国共産党総書記に尋ねた。「富農は打倒したかね」

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