ミャンマー「僧侶が率いたデモ」の真相

執筆者:竹田いさみ2007年11月号

欧米やタイなどの報道だけでは、ミャンマーの実情はわからない。いま何が起こっているのか。 ヤンゴン市の中心部を埋め尽くした僧侶と市民のデモを前に、軍事政権が今度こそは倒れ、民主化勢力が政権を勝ち取るのではないかと、淡い期待を寄せた人も多かったのではないだろうか。九月二十二日、民主化指導者アウン・サン・スー・チーさんが、自身の私邸まで行進してきた僧侶に合掌し、無言ながら十五分間の対面を果たした。その写真が公開されたことで、世界中が動向を注視した。インヤ湖に面したスー・チー邸に通じる自動車道路は、幹線道路からバリケードで常に遮断されており、検問所も設置されていて、通行証がないと進入できない。僧侶のデモ隊が、この警戒厳重な検問所を平和的に突破し、スー・チーさんとの面会を果たしたことは、政治的に大きな意味があったといえよう。 ミャンマーは敬虔な仏教国であり、国民から敬愛されている僧侶には、軍たりとも決して発砲しないであろうという強い思い込みが先行した。冷徹な国益計算をするあのシンガポール『ストレーツ・タイムズ』紙でさえ、軍は僧侶に手出しできないと見通していた。 しかし、軍は複数の僧院を襲撃し、僧侶に発砲してデモ隊を制圧。現在までに約二千人の僧侶や市民を連行した。「聖域」にいるはずの僧侶に対して、なぜ軍は発砲、襲撃、暴行、連行、拘束などできたのであろうか。

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