日本中「同じ景色」の醜悪

執筆者:2007年11月号

 全国の地方都市に共通したものがある。東京や大阪、横浜、名古屋といった大都会ではあまり見られない。なぞなぞめいて恐縮だが、このごろとりわけその感を強くしている。国道沿いの景色である。 大きく派手な建物に広い駐車場、車がたくさん停まっていれば、それはまず「パーラー」という名のついたパチンコ屋。漫画などの雑誌が主軸商品の大型書店、中古車ディーラー、ファーストフードの店、ホームセンター、それに超大型の銭湯。 地元の商店街の個人商店をことごとく駆逐したショッピングセンターもある。夏の暑い盛りでも家族連れで入って、ほぼ一日、何も買わなければタダ同然で過ごせる。子供のころ交差点の信号さえなかった筆者の郷里も、いまやこの手の店がほとんどそろっている。 便利になったもんだ、と年寄り衆はいう。にもかかわらず、店は常に入れ替わっている。どうやら、採算が取れないらしい。パチンコ屋も最初はにぎわっているが、しだいに客足も遠のく。毎日、何万円も使える人など、そうはたくさんいないからだ。 若者たちは国道沿いの店には寄り付かない。高速道路が張り巡らされているので、昔なら汽車で泊りがけでなければ行けなかったような都会に、簡単に日帰りが可能だ。ブランド品が安く手に入るアウトレットも全国いたるところにできている。何も出かけなくともネットで注文すれば、東京に住んでいるのとさほど変わらない。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。