「日証金」に立て籠る日銀天下りの“無芸大食”

執筆者:大神田貴文2007年11月号

不要論すら唱えられてきた証券金融会社に、ようやく「市場の番人」が検査に入った。慌てているのは――。 東京証券取引所の向かいに、とりたてて特徴のない八階建ての雑居ビルがある。東証一部上場の証券専門ノンバンク「日本証券金融(日証金)」は、ここにひっそりと本社を構えている。会社の設立から八十年。閉鎖的で「シマ」と呼ばれる日本橋兜町の証券村でも古株の部類だ。 主力業務は株取引に必要な資金や株券の貸し出し。需給に応じて、証券会社を通じ法人などから保有株を一時的に借り、投資家に融通する。取引の流動性維持に“貢献”する証券市場の黒衣だ。 今期の業績は、営業収益四百三十億円に対して、営業利益百三億円の見込み。この額を従業員わずか二百人ちょっとで稼ぎ出す。役員を除いても平均年収は九百六十一万円(昨年度)と、大手銀行並みだ。 高収益にはワケがある。旧証券取引法下で免許制を採ってきたため、日本の証券金融会社は日証金と大阪証券金融(大証金)、中部証券金融(中証金)の三社のみ。それぞれ貸し出し銘柄の主な取引市場によって棲み分け、寡占状態となっているのだ。 三社のリーダー格は日証金。いま、そこに証券取引等監視委員会の検査が入った。慌てているのは、歴代社長や役員を送り込み日証金の役員室を事実上独占してきた日銀だ。

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