少子化対策の主要な柱の一つが「働き方の見直し」だ。そこで最近、ワークライフバランス(WLB)という言葉が流行りつつある。訳すと、「仕事と生活の調和」だ。 WLBをめぐって、巷で耳にする通説が三つある。 第一の通説……WLBは、企業にメリットが少ない。 第二の通説……WLBは、子育てしていない従業員には、メリットがない。 第三の通説……WLBは、中小企業だと導入しにくい。 筆者はこれまで、WLBやダイバーシティ(性別・年齢・国籍などの異なる属性や異なる発想・価値を認め、それらを活かし、利益拡大を狙う経営戦略)に関して先進的な取り組みを行なっている国内外の企業、約四百社(以下、WLB先進企業と呼ぶ)の経営者、人事労務管理担当者へのヒアリングを実施してきた。 また、一般企業を含む国内企業三千社のデータベースを作成し、さまざまな分析を行なってきた。 データに照らし合わせると、先述の三つの通説はいずれも間違っている。 ドイツ政府は、「WLBを利回りに換算すると、年率二五%のハイリターン投資」という報告書を出している。日本企業を対象とした三千社データベースをみても、WLBに取り組んでいる企業は、経営戦略的な観点から取り組みを進め、業績が著しく向上している。一九九二年と二〇〇二年の企業業績を比較すると、一般企業の売上高が一割以上、落ち込んだのに対して、逆にWLB先進企業の売上高は三割近く伸びた。

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