イラク「小さな前進と大きな懸念」の現状分析

執筆者:ジェームズ・キットフィールド2007年11月号

抜本的な宗派間の政治和解は進まず、イランの干渉もやまない。アメリカのなすすべは――。[ワシントン発]九月十日、米議会で証言に立ったライアン・クロッカー駐イラク米大使とイラク駐留米軍のデイビッド・ペトレアス司令官は、当面の最大の任務を達成した。それは、今年一月に開始したイラクへの米軍増派は成果をあげており、来春まで期間延長すべきだと、イラク政策をめぐって揺れ動く共和党議員を説得することだった。イラクで指揮を執る二人の最高幹部は、ブッシュ政権与党内の造反をくい止め、イラク戦争に関して遅れがちになっていたワシントンの政治時計の針を元に戻した。 かくして、米世論の支持を失って久しいこの戦争は、転機になっていたかもしれない重要なチャンスをまたも逃し、アメリカの血と財は二〇〇八年になっても流れ続けることが決まったのだ。 ペトレアス司令官は三万人の増派がイラクの治安安定化に役立ったとして、来年三月から増派前の十五個旅団十三万人体制に戻し始めるのが可能な状況であると議会に報告。現在イラクに駐留する二十個旅団十七万人弱のうち、第一陣としてクリスマスまでに一個旅団四千五百人の兵士を帰還させるとした。イラクの治安の改善状況からして、二〇〇八年中にはさらなる段階的縮小も可能との予測もなされている。だが、イラクで楽観的見通しが当たった例はない。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。