チベット独立「封殺」を強める中国

執筆者:藤田洋毅2007年11月号

「第三の道? あるわけないじゃないですか。必要もないでしょう」 中国共産党の幹部の一人は言い放った。二〇〇二年秋からチベットのダライ・ラマ亡命政府(在インド)の特使訪中が始まり、雪解けの気配かと関心を呼んだ。だが、今年六月末から訪中した六回目の特使に対しても、中国は頑なな姿勢を崩さなかった。そればかりか「分離独立の立場を放棄しない限り、対話や交渉は無意味だ」(チベット自治区の尼瑪次仁副主席)と、これまで以上に突き放す姿勢を鮮明にしたのだ。 中国政府の反対にもかかわらず、六月にハワード・オーストラリア首相、九月にはメルケル・ドイツ首相が、いずれも首相公邸にダライ・ラマ(七二)を招き会談。続いて十月十七日には米議会が最高勲章である「議会金メダル」をダライ・ラマに授与する式典にブッシュ大統領の出席を予定するなど、海外からの支援はむしろ強まっているように見える。前出の幹部はさえぎっていう。「声だけの支援が、どれほどの影響力をもちうるのか。最大のカギは、ダライが今もどれほどチベット人社会に浸透し、彼らを統率できるかだ」 一方で、出口の見えない亡命生活に苛立つ若者を軸に、三万人の会員を誇る「チベット青年会」がますます主張を過激化させ、ダライ・ラマの足元を揺さぶっている。新疆ウイグル自治区を舞台に東トルキスタン独立を訴えるウイグル族急進派の一部は、タリバン政権当時のアフガニスタンに走り、中国との国境近くの複数の基地でアルカイダから軍事訓練を受けていた。亡命政府からも「ごく少数、最多でも五十人以下ながら、彼らの基地に駆けつけた」と、中国軍の情報部門幹部は見ている。

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