目をつぶれない日米関係の「冷えゆく現実」

執筆者:伊奈久喜2007年12月号

父・福田赳夫首相もカーター政権との関係には苦労した。首相には静かな決意が必要だ。 本誌が読者の目に触れるのは福田康夫首相が訪米を終えるころだろうか。ブッシュ大統領との日米首脳会談は成功だったとする説明が双方からなされ、雰囲気は改善するはずだが、外交修辞を取り除いた現実に目をつぶるわけにはいかない。それは小泉・ブッシュ蜜月時代が終わり、余熱も冷めた日米関係をめぐる全体的な政治状況である。 安倍晋三前首相が政権を投げ出した裏にも日米関係の影があった。安倍氏が健康を損ねた原因は参院選敗北もあるが、退陣会見を聞く限り、インド洋での海上自衛隊による給油活動の継続が難しくなった現実がそれ以上に重かった。福田政権にとってもそれは最大の課題であり、十一月二日からの中断がいつまで続くのか、見通しが立たない。 中断期間を最短にしたいと考える首相が持ちかけた民主党との大連立は拒否された。残る選択肢は、参院が給油法案を否決ないし六十日以内で採決しないという事態を受けて衆院で三分の二を持つ自民・公明の与党による再可決しかないが、与党側には、それが衆院解散の引き金になるのを恐れる声があった。 小沢一郎代表の辞任騒動による民主党の動揺の結果、早期解散の可能性が小さくなったとすれば、年内にも衆院での再可決で給油法が成立するかもしれない。が、状況が幾分か改善しても守屋武昌前防衛事務次官のゴルフ接待問題もあり、トンネルの出口までは見通せない。

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