「大連立」でうごめいた黒衣

執筆者:2007年12月号

 政治が激動するときには、政治家ではなく民間人の影がちらつくことが多い。福田康夫首相と小沢一郎民主党代表の間の降って湧いたような「大連立」騒動の陰にも民間人の暗躍があったことは政界の常識のようになっている。だれもが知っている新聞とテレビ界の大物である。 この二人はこれまでも政局の節目にシナリオライターとして登場した。安倍晋三首相が突然政権を投げ出し、直後にはだれもが麻生太郎幹事長が後継者だと思っていた。それが一晩、いや半日でひっくり返り福田首相になった陰にはこの二人の暗躍があったことを否定する自民党有力者は一人もいないだろう。 主役は新聞界の超大物氏。まず小沢一郎氏に大連立を持ちかけ、自民党のだれをもっとも信頼しているか、と尋ねる。小沢氏が挙げたのは当選同期の森喜朗元首相。ここで小沢―森両氏が話し合い、大連立への工作を開始する。すでにこの動きは福田政権誕生前、すなわち参院選の結果が出たあとから始まっていた。 森氏はもっとも信頼する中川秀直元幹事長を福田首相との調整役にする。一方で中曽根康弘元首相はかつて自分の秘書だった与謝野馨前官房長官を動かす。与謝野氏はかねて小沢氏と趣味の碁を通じて親しい関係にあった。久しぶりの手合わせ、という形をとって二人は大連立をめぐる下打ち合わせをする。

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