愛国者「ワタナベさん」が日本を売るとき

執筆者:田中直毅2007年12月号

財政、年金、医療。わが国を「持続可能な社会」にするための“骨格”が危機に瀕している。制度の再設計に臨めるのは今しかない。 ファンドを中心とした外国人投資家と海外脱出など一度も考えたこともない日本の一般国民との間には、深い溝があると考えられてきた。ハゲタカやハイエナという動物のイメージで投資ファンドを描くことも一つの傾向となったからである。国民の本来の資産に無遠慮に手をつっ込んでくる国外勢力の遮断こそが国政の課題との言説さえ登場していた。しかし次の三点の設問を頭に浮かべてほしい。 (一) 日本国の債務の認識に当たって、地方自治体のうち、実質上の財政破綻に陥ったところの累積債務から、国は本当にリスク遮断をなしえているであろうか。 (二) 基礎年金の財源として国庫負担が現状では三分の一、二〇〇九年度からは二分の一になる。そして今後の構想として全額国庫負担案も有力だ。それでは保険料の拠出から切り離されたとき、基礎年金の月額給付六万六千円という金額は、たとえば、生活困窮者に対する生活保護費の支給との間でどのような関連に立つのか。年金支給額の引き上げ要請という「有権者の声」は、保険料の拠出が廃止されたとき、どのように位置づけられるのか。その時「大きい政府」すなわち更なる増税路線への抑止力はどこで働くのか。

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