これこそが本や新聞・雑誌の本格的な電子化時代の始まりを告げるのかもしれない。キンドルが焚きつける変化とは――。[ニューヨーク発]米タイム誌(十一月十二日号)は毎年恒例となる「発明大賞」に、米アップルが六月に米国で発売した新型携帯電話機の「iフォン」を選んだ。発売後七十日あまりで百万台を販売したヒット商品の選考に異議を唱えるつもりはないが、選考期間はもう少し先延ばしにした方が良かったかもしれない。オンライン書籍販売のアマゾン・ドット・コムが十一月十九日に発売した電子書籍端末「キンドル」も、iフォンに匹敵する衝撃をもたらす可能性が十分にあるからだ。 電子書籍は松下電器産業やソニーが二〇〇三―〇四年にかけてすでに商品化しており、それ自体に新味はない。ソニーは日本での端末販売を〇七年になって取りやめるなど、ほとんど普及していないのが現状だ。にもかかわらず、アマゾンのキンドルは米クリスマス商戦の目玉商品となっている。三百九十九ドル(約四万四千円)とギフト商品としては極めて高価だが、発売から三週間経過しても在庫切れ状態が続く。 キンドルのハードウエアはソニーの「リブリエ」と外観上の大きな差はない。大きさはA5判用紙を一回り小さくした縦一九〇ミリ×横一三五ミリ。厚みは一九ミリで、重さは標準的な文庫本よりやや重い二百八十八グラムだ。画面は白黒表示で対角線六インチの大きさを持つ。内蔵メモリーには約二百冊分の書籍が保存可能。なぜこれが話題の商品となり、出版・メディア業界を震え上がらせているのか。それが意味するのは何なのか――。

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