「国の責任放棄だ」「私らは打ち出の小槌じゃない」。十一月十四日、東京で開かれた健康保険組合連合会(健保連)の全国大会は、「反厚生労働省」の空気に満ちていた。約四千人の参加者を前に、福岡道生会長は「自主自律が保険制度の原則。その努力を踏みにじる筋の悪い肩代わり案が突然出てきた」と強く批判した。 健保連は、大企業の社員らが加入する健保組合の全国組織。日ごろは医療費削減という共通目標のもと厚労省と足並みをそろえることも多い。それが今回態度を硬化させたのは、厚労省が二〇〇七年八月、政府管掌健康保険(政管健保)に投入していた国庫負担(税金)分を健保組合にツケ回ししようとしたからだ。 政管健保は中小企業を中心に約百五十二万事業所に適用される。一企業では運営が困難なため、社会保険庁が一括運営する。加入者は約三千六百万人。財政を補うため、医療給付費の一三%が税金で賄われている。 一方、健保組合は千五百二十団体あり、それぞれ大手企業などが運営する。従業員と家族ら約三千万人が加入し、原則として税金(国庫負担)は投入されていない。 ツケ回し画策の理由は何か。話は一年半前に遡る。小泉内閣最後の「骨太の方針 二〇〇六」には、毎年七千億―八千億円増え続ける社会保障費を抑えるため〇七―一一年度の五年間で一・一兆円削減する方針が盛り込まれた。一年にならせば二千二百億円の「予算削減ノルマ」。これを受けて財務省は厚労省に〇八年度分の「ノルマ」を政管健保への国庫負担を削って達成することを飲ませた。〇七年夏のことである。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。