十一月六日、JR東日本が二〇一三年の完成を目指して進める東京駅八重洲口の再開発計画が、その一端をのぞかせた。赤レンガの駅舎の両端にオープンしたのは、二百メートル超のツインタワー「グラントウキョウ」。駅に隣接するとあって「周辺より賃貸料は高め」(関係者)にもかかわらず、大和証券グループや仏BNPパリバグループ、リクルート、大丸東京店などが入居する。「今後数年間は都心の再開発に事業の軸足を据える」(JR東首脳)。新しい東京駅は、少子高齢化にともなう鉄道事業の先細りを見越し、他の収益源を探るJR東の象徴だ。東京駅のほか、世界最多(一日七十六万人)の乗降客を誇る新宿駅南口の再開発も進行中。線路を覆う一・五ヘクタールの人工地盤を整備し、二〇一五年度をめどに複合ビルを建設する。それ以外にも、新宿、池袋に次ぐ乗降客数を誇る渋谷駅を東京急行電鉄と組んで新築し、三十三階建ての複合ビルを建設する(完成予定は二〇一二年)など計画が目白押しだ。JR東の路線で乗降客が一日十万人以上の駅は八十七。東京メトロ(二十八駅)、東急電鉄(十八駅)、JR西日本(十二駅)と比べ群を抜き、今後の開発余力は大きい。 一九八七年の国鉄分割・民営化から二十年。関東甲信越・東北地方の鉄道ネットワークを担うべく誕生したJR東の売上高(〇八年三月期)は二兆六千九百九十億円と過去最高を更新する見通しだ。世界最大の鉄道会社は巨大な集客マシーンである「駅」を中核に、再開発、流通、電子マネーといった事業を展開する複合企業体に生まれ変わろうとしている。

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