なぜいま「シラク捜査」なのか

執筆者:林路郎2008年1月号

[パリ発]フランス共和国の主の座に二期十二年君臨し、日本でも大相撲ファンとして馴染みの深いジャック・シラク前大統領(七五)が、十一月二十一日、公金流用容疑で捜査対象となった。日本で言えば容疑者の立場に置かれたのと同じ。フランスでは大統領経験者が捜査対象となった例はなく、政界、国民は息をひそめて成り行きを注視している。 容疑は、シラク氏のパリ市長時代(一九七七―九五年)のうち八三年から九五年にかけてに関するもの。シラク氏が大統領選出馬のため自ら組織した保守与党・共和国連合(RPR=現与党・民衆運動連合の前身)の党員約二十人をパリ市に架空に雇い、給料名目で市財政から資金を支出させた疑いが持たれている。 シラク氏の市長時代には、RPR党員の給料を市の取引業者に肩代わりさせた事件もあり、側近のジュペ元首相が政党資金取締法違反で有罪判決を受けた。だが、二十年ほども前の事件でなぜいまシラク氏が捜査対象となったのか。 現大統領ニコラ・サルコジ氏(五二)とシラク氏の犬猿の仲は周知の事実。しかもサルコジ大統領が「過去との決別」を合言葉に改革の旗を振るとあっては、「サルコジ氏の意向が働いているのではないか」との憶測が働いても不思議はない。

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