真夏のクリスマスは、南半球の風物詩である。オーストラリアやニュージーランドでは、強い日差しが降り注ぐ中、見た目にも暑苦しいサンタクロースが商店街を闊歩する。南半球の人々は、「真冬」と「真夏」、二つのクリスマスをうまく使い分けるようになっており、自分の好みに応じてクリスマス休暇を選択する。炎天下でビールを片手にビーチへ繰り出しマリンスポーツを楽しむもよし、オーバーコートを持参して真冬の英国か米国に渡るもよし。 二〇〇七年のクリスマスに、勝利の美酒に酔いしれるのは、十一月の総選挙で大勝した労働党のケビン・ラッド新首相。逆に憤懣やるかたない思いでいるのが、敗れた保守連合のジョン・ハワード前首相だ。ハワード氏は一九九六年に首相になって以来、約十二年にわたって長期政権を築いてきたが、今回の選挙では、労働党から元テレビキャスターで知名度の高い女性の「刺客」を送り込まれ、思いもかけず自らの議席も失った。「賞味期限が切れた」現職首相が「刺客」によって落選――マスコミ報道ではこのように理解されがちだが、本当の理由は、もう一つある。有権者の顔ぶれが様変わりしたのだ。 オーストラリアを代表する都市シドニー、メルボルン、ブリスベンの中心部を歩くと、アジア系オーストラリア人が目に付く。一口にアジア系といっても、中国系、ベトナム系、フィリピン系、インド系など、多様だ。

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