先進国の農業は、どうしても競争力に劣る。高付加価値化や基準作りなど、EUはあの手この手で強化を図っている。 パリを南に下り、フォンテーヌブローへ向かう。道の両側に一面に広がるのは明るい黄色の絨毯。菜種畑で菜の花が揺れている。二月頃から一帯の畑が黄色く染め上げられていくさまは息を呑むほどに美しい。 EU(欧州連合)の域内で菜種畑が広がり始めたのは一九七〇年代から。きっかけは農産物の過剰生産だ。穀物や牛乳など余剰農畜産物を無条件で買い上げる制度を採っていたEUは、重くなる財政負担に耐えきれず、転作への誘導に乗り出した。転作後の作物には生産量が減っていた菜種などが選ばれ、実質的な補助金も用意された。黄色の絨毯はその産物である。「バターの山、ワインの海」。過剰なまでの生産能力は、農業の大規模化と近代化によってもたらされた。一九七〇年代から離農を奨励するなどして農業人口の削減を図り、経営規模を拡大。同時に域内で産品ごとに価格を統一し、その価格を農家に保証(価格支持)しながら、輸入農産物に対しては可変課徴金(国際市場価格と域内統一価格の差額)を課した。域内農家を保護した結果として自給率が高まり、一部の農産物の過剰すら生み出したというわけだ。

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