いったんは歩みを止めた欧州統合が、“仕切り直し”の条約で再びスタートを切れそうな態勢に戻った。しかし、前途はまだ多難……。[ブリュッセル発]欧州連合(EU)の加盟二十七カ国は、昨年十二月十三日、EUの新たな基本条約となる「リスボン条約」に調印した。「EU大統領」の創設などの機構改革が新条約の目玉だ。欧州が一つの国家となる将来像を鮮明に示した「EU憲法」に比べ、小さくまとまってしまった感は否めないが、欧州が将来、統合への歩みを再開する下地は整ったといえる。 新条約の調印式は、世界遺産に登録されたリスボンの名所、ジェロニモス修道院で行なわれた。欧州諸国の首脳と外相が一堂に会し、口々に「欧州の新時代」の出発を祝った。 この歴史的な舞台で最もメディアの注目を集めたのは、皮肉なことに、二十七カ国首脳の中でただ一人その場にいなかった英国のブラウン首相だった。表向きの欠席理由は、下院の会議日程と折り合いがつかなかったためだが、新条約への懐疑論が強い国内事情を考慮したのは見え見えだった。 ブラウン首相は、条約の中身について合意が成立した昨年十月のEU首脳会議でも、各国首脳がシャンパンで祝杯をあげる中、ただ一人グラスを持ち上げなかった。

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