十月に民営化を控える日本政策投資銀行に、半世紀ぶりの民間人トップとして乗り込んだ室伏稔新総裁の評判が、早くも芳しくない。 昨年秋に就任した室伏総裁だが、実務の切り盛りの大部分は財務省事務次官から天下った藤井秀人副総裁や他の理事に「ほぼ任せっぱなしの状態」(関係者)という。幹部らは、七十六歳と高齢の新総裁を軽んじる一方で、監督官庁である財務省の威光を背にした藤井副総裁の顔色ばかりをうかがい、「どちらが総裁か分からない」との声すら上がる始末だ。 室伏総裁が「商社(伊藤忠商事)時代の経験が評価された」と自信をもつ海外展開も、まだこれといった成果は上がっていない。ある幹部は「海外の当局や一流企業とのパイプが太いというが、現役を離れて久しく、ほとんど使い物にならない」と切り捨てる。 もともと金融は門外漢。就任後のマスコミ各社とのインタビューでも質問に答えられず、勉強不足ばかり目立つなど、周囲をあきれさせた。 日本郵政と同様、政府出資が当面残る政投銀に対しては、メガバンクなど民間金融機関から業容拡大路線への反発も根強い。大口融資先の日本航空の再建問題もあり、前途は多難だ。財務省のシナリオに乗って門外漢を任命した首相官邸の責任こそが問われる。

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