「ソマリア」を伝える記者の非日常的日常

執筆者:モハメッド・アリ・ビレ2008年2月号

[モガディシオ発]この国で報道に携わる者は、常に、現在政権を握るソマリア暫定政府と、イスラム原理主義組織「イスラム法廷会議」との銃口の狭間に立たされてきた。二〇〇七年だけで八人のジャーナリストが殺害され、四十三人の報道関係者が暫定政府に拘束されている。 〇六年八月当時、首都モガディシオは法廷会議の支配下だった。法廷会議の批判記事を書いた私の携帯電話に、番号非通知の着信があった。「ビレさんだね。今まではうまく逃げ延びてきただろうが、今度は死んでもらう」。十八年の記者人生で初めて受けた脅迫に、膝が震えた。 二週間後には私の留守中、自宅に原理主義者が押しかけた。当局に抗議すると、広報担当は受話器越しに「出頭せよ。世界のどこに逃げようと、イスラムの正義から逃げることはできないぞ」と吐いた。 身の危険を感じた私は、単身、首都を脱出した。三十キロ離れた町に身を隠し、三日後の早朝、トヨタのピックアップトラックの荷台に乗り込んだ。同乗者は女性や子供を含め八人。九十キロの悪路を北へひた走り、さらに西へ九十キロの町に辿り着いた。ようやく法廷会議の支配地域から脱け出せる。だが待ち構える検問所を目にした時、血の気が引いた。

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