「期限通りに完成するかって?さあ、どうだろうね」。中国・浙江省三門で新設される原子力発電所へ主要機器を供給する日本企業の幹部は、こう突き放す。原発は百万点もの部品で構成されることもあり、計画通りきちんと稼動させるためにはプラント全体の緻密な設計技術と綿密な工程管理技術が不可欠。 しかし二〇一三年に稼動開始予定の三門原発1号機の建設事業は、工程管理を含めた総合エンジニアリングを中国の民族系エンジニア会社が担当する。 プラント主要機器を一式まるまる同一企業に発注するなら大きな問題になるまい。だが三門1号機向け主要機器は東芝、三菱電機、三菱重工業といった日本企業に加えて韓国重電大手の斗山重工業など複数社が供給元に名を連ねる。建屋の建築や土木工事にも多くの企業が入る。 各社が製造する主要機器の品質に懸念はないものの、日韓企業の役割は機器を造って納めるまで。「工程管理は契約に含まれていない」(関係者)ことを考えると、民族系エンジニア会社の取りまとめ能力がプロジェクト全体の成否を握る。 三門1号に採用される原発は、東芝傘下の米原子力大手ウエスチングハウスが開発する新型原子炉「AP1000」。米国政府から標準規格を取得した同原子炉は米国内のどこに建てても良いとの“お墨付き”を得ている半面、実機はゼロ。三門1号向けが世界中で初号機となる。

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