中国の成長率が急降下している。今年1~3月期の実質成長率は7.0%と、昨年10~12月期の7.3%からさらに低下。「4~6月には6%台突入が確実」(証券系アナリスト)の情勢となった。過去5、6年、成長を牽引してきた過剰なインフラ建設、不動産開発を抑制し、成長を健全化しようとする習近平政権の政策が背景にある。だが、成長率低下は膨大な過剰生産設備を抱える中国産業を全面崩壊させるリスクがあり、雇用不安、消費低迷も招きかねない。起死回生を狙った習政権が進めるのが、この数週間、世界を揺さぶったアジアインフラ投資銀行(AIIB)である。

 

中国全土に出現した「鬼城」

 中国の成長率は2007年の14.2%を直近のピークとして、ずるずると低下、昨年は政府目標(7.5%)を下回る7.4%まで低下した。大きな流れを捉えれば、中国経済は30年間以上続いた高度成長期を終え、成熟化への入り口にさしかかったといえる。アジアで同じように驚異の成長を遂げた日本や韓国がたどった道に重なる。ひとつ違うのは、中国がまだ1人当たり国内総生産(GDP)が6000~7000ドル水準の“中進国”で、農村に限ってみれば依然、途上国並みという点だ。日本、韓国や欧米の先進国は、高成長の過程で国民全体の経済水準が底上げされ、工場労働者、農民も中流と呼べるまでになったが、中国は底上げができないまま成熟化しようとしている。中国でこの数年、回避すべきリスクとして指摘されて来た「未富先老(豊かになる前に老いてしまう)」である。

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