沖縄と台湾は近づけるか

執筆者:野嶋剛2015年4月30日

 主要メディアではほとんど報じられなかったが、4月18日から4日間、沖縄県の翁長雄志知事が台湾を訪問し、港務関係の覚書を交わすなど、沖縄と台湾との間の経済交流強化をアピールした。その直前の訪中が対照的にロー・プロファイルに徹したものだっただけに強い印象を残した。現在、沖縄県は日本政府と普天間基地の辺野古移設をめぐって深刻な対立を抱えているなか、沖縄県がいま台湾との関係を強化することは何重もの意義を見いだせる「好手」で、今後の沖台関係は注目に値するだろう。

 

乏しかった感情面でのつながり

 奄美諸島から始まる「琉球弧」は、ゆるやかにカーブを描きながら最終的には台湾にたどりつく。沖縄と台湾は地理的に見ればまるで一体のような関係にある。しかし、長らく沖縄と台湾のつながりが深まることはなかった。

 歴史的には、琉球文化は日本文化の一枝に属するもので、中国からの影響は強かったものの、本質的な言語や民族としては日本と最も近い。一方、台湾は南洋文化の土台に漢民族文化が重なった文化構造を持っており、沖縄と台湾は、八重山・宮古諸島を一種の緩衝帯として、異なる文化圏に属していた。

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