4月17日、タイのプラユット暫定首相は90分に及ぶテレビ演説を行い、「私の統治を高圧的と呼ぶ人もいるが、すべてはタイのためだ」と内外からの強権政治批判に強い反発を見せる一方、2005年秋以来続いてきた政治混乱を根絶するためには「根本的な改憲が必要である」と訴え、暫定政権への国民的理解を求めた。同首相の狙いが、タクシン派再起を法的に封じ込めるための「根本的な改憲」であることはいうまでもない。相変わらずタイ政治は、永い海外逃亡生活を余儀なくされているタクシン元首相を中心に動いているわけだ。

 

最高権力者だった「陸軍司令官」

 クーデターを数多く重ねてきたタイだけに、クーデターから新政権発足までの政治日程は、クーデター成功(憲法停止、国会解散)→暫定政権・立憲議会発足→新憲法審議・成立と続き、1年前後を経て実施される総選挙を経て民政移管(新政権発足)、とほぼ定まっていた。クーデターから民政移管までの間に、軍政(暫定政権)当局は、民政移管後も政権を維持すべく腐心する。その核心が新憲法制定過程での閣僚の要件――下院議員でなくても、あるいは現役官僚でも閣僚就任可能の条項を盛り込むか否かにある。

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