北海道洞爺湖サミット「テロ警備」の死角

執筆者:西村竜郎2008年3月号

サミットを七月に控えた今、一つの「弱点」が浮き彫りになった。それは「放射能テロ」への対処能力の決定的低さだ。 今年七月の主要国首脳会議(北海道洞爺湖サミット)を控え、日本の治安関係機関の総力をあげた準備が始まった。大規模デモから航空機を乗っ取っての自爆テロまでさまざまな事態への備えが進むなか、脅威度が高い割に備えが十分でない一つの「弱点」が浮上してきた。医療や産業用に使われている放射性物質を爆発させて汚染を広げる「放射能テロ」だ。背景には、関係機関の警備の限界や連携不足、危険を直視しようとしない政治家や国民というさまざまな問題が横たわっている。 日本でのサミットの開催は五回目となるが、今回の警備体制は空前の規模になる。ここ数年サミット反対を掲げて騒乱を起こしている反グローバル運動グループだけでなく、アルカイダなどの国際テロ組織がサミットを標的にしている可能性が指摘されているからだ。警備の主戦場はむしろ東京? 空前の警備を象徴する動きとして、航空機を乗っ取って突入する「9.11」型テロへの備えがある。警備当局は「極東ロシアなど周辺国を飛ぶ外国機が乗っ取られてサミット会場のザ・ウィンザーホテル洞爺に向かう事態もありうる」と警戒。このため、防衛省内では、どうしてもやむをえない場合はハイジャック機を航空自衛隊のF15戦闘機や千歳基地配備の地対空ミサイルPAC2で撃墜する案、レーダー網をかいくぐり小型機が侵入してきた場合には、陸上自衛隊の携帯型地対空ミサイルで叩き落す案まで浮上しているという。

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